12月25日  【童話】カラスの王様 19

カラスの王様は体力が消耗していた。
昨日から何も食べていない体は風圧に負けそうになるほど弱っている。
それでも力の限りを振り絞って、懸命に飛んでいた王様だった。
「急がなくちゃ」
「急がなくちゃ、間に合わない」
脇目も振らずに一直線に飛んでいた。



いつもの交差点にやって来た。

信号機の上では、海鳥たちが羽を休めている。
ぴったりと寄り添うでもなく、とは言え、それぞれが孤立して見えるほどは間隔は開けずに、整然と信号機の上に並んでいた。

いつものベイタウンの朝だった。


信号機の上の1羽の海鳥が、彼を見つけて叫んだ。
「またカラスの王様がやってきたよ」

カラスの王様は、いつものように彼らの所へやってきて。
いつもと違う言葉をかけた。
「この隅に、止まらせてもらってもいいかい?」

海鳥たちは驚いた。
王様が、僕らをどかそうとしない。
思わず全員が、間隔を少しずつ詰め合ってしまった。
電車の座席に後から乗ってきた人を1人詰めて座らせる・・・そんなシーンを連想させるかのように。

大きな烏1羽と小さな海鳥たちが信号機の上に並んでる。
滅多にお目にかかれない光景かもしれない。

海鳥が尋ねた。
「そう言えば、カラスの王様。あなたは毎日決まってこの時間にここにいるのね」
彼は答える。
「君たちだって同じじゃないの。いつも皆でここにいるよね、楽しそうに」

「いいや、僕たちは暖かい天気のいい日にしかいないもの」
「そうそう。あなたは、雨でも風の日でも、いつも決まってここにいる」
「王様、どうしてあなたはこの時間にここにいるの?」

カラスの王様はこう言った。
「今日と同じだよ。朝飯をたらふく食べてここで一服しているのさ」



始めて人間の街にやって来た日から。
カラスの王様は、1日たりともこの場所に来るのを欠かしたことはない。
いつもきまった朝のこの時間。
いつもきまったこの信号機の上に。
そして、ここから下を眺めるのが毎日の日課だった。

今日も子供たちがワイワイと通学をしていく。
『間に合った』
『この時間にここにいなくちゃいけないんだ』


カラスの王様は待っている。
子供たちを見つめながら待っている。
今日こそと。
あの声が聞こえてくるのを待っている。

「あっ、キューちゃんだ!」
「キューちゃん、ここにいたんだね。探したんだよ」
「一緒におうちに帰ろうね」


カラスの王様は、小さな声でつぶやいた。

「おはよう」



                 【おわり】
        ★☆★☆メリークリスマス☆★☆★
       ☆☆読んでくださりありがとうございます☆☆
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by keshi-gomu | 2011-12-25 18:00 | 【童話】カラスの王様