12月23日  【童話】カラスの王様 16

松林にいた海鳥たちは、いつものように信号機の上に陣取った『カラスの王様』を眺めながら話を続けた。

「不思議だと思わないか?」
「烏たちはゴミをあさってはいるけど、もっと上手に食べているよね」
「そう言えばよく人間に追い掛け回されているのは、カラスの王様だけだわ」
「楽しんでいるのかな」
「いや、カラスの王様は『人間なんて大嫌いだ』って言っていたよ」
「僕なんか『カラスの王様なんて大嫌いだ』って言いたいけどぉ」
「他の烏たちみたいに、グループにも入らないね」
「理不尽だってまかり通ると思ってる『王様』だもの。皆と一緒には行動しないさ」
「皆と一緒って、こんなに楽しいのにね」

オジサンのゴミ袋から”いただいた”戦利品のフライドチキンモーニングを食べ終え、
カラスの王様は信号機の上で上機嫌だった。
凱旋兵士よろしく、一声『カー』と勝利の雄たけびを挙げた。

遠く眺めれば、今年もイルミネーションが街を飾っている。
あれから何度目のクリスマスを迎えるのだろうか。


「今日は天気もいいし、久々に海辺へ行ってみようかな」

彼は太陽の暖かい昼下がりに、海を眺めるのが好きだった。
青い海に光がキラキラと反射して、時がゆっくりと流れる不思議な世界に包まれた。

海辺といっても、ベイタウンの海辺である。
海に面した工場地帯の半ば機能的に作られた人工の海辺だ。
辺に置かれた重機の物々しさ。
数々の資材が積み上げられたコンクリートの世界である。
それでも、そこはカラスの王様の別天地だった。

こうやって海の上を飛びまわる心地よさは、爽快感そのものだ。
鳥として生まれた幸せすら感じていた。

「あ、あそこに銀色包み紙のチーズが落ちているぞ」
海に突き出た資材置き場の網の下に、確かに光る何かが落ちている。
本当にあの有名な三角形おつまみチーズか?
どうも、王様の弱点は昔から食い意地が張っていることらしい。

旋回をしたかと思ったら、突然急降下。
目的地の網の上に飛び乗ったカラスの王様は、光るものの品定めを始めた。

資材保護にかける網が、無造作に塀に投げかけられていた。
その網の塊の下の下の方に、光る何かは存在している。
「ん~、よく見えないな」
くちばしを突っ込んでみたが、到底届くわけがない。
網に足を踏ん張りながら、自分の体を横にしたり、逆さになったり。
こと食べることとなると熱心な王様である。

逆さまになると光るものに近づける感じだ。
くちばしを伸ばして・・・
「あっ」
しまった、足が網の間に挟まってしまった。
「う、動きが取れない」
中刷りになった王様はもがいてみるが、もがけばもがくほど網の間に足が食い込んでいく。

ここは海に面した資材置き場。
品物がないこの日、あの大嫌いな人間すらやってこない場所だった。

                      【つづく】・・・がんばれ。
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by keshi-gomu | 2011-12-23 12:10 | 【童話】カラスの王様