12月22日  【童話】カラスの王様 15

ふとあたりを見渡すと、あちらこちらに木々がちらほら見える。
人間の家々にも林ほどではないが、木々があることに王様は気がついた。
数件先には、何か実がなっている木まである。
「あ、柿の木があるじゃないか」
今日の食事は、柿の実にすることに決めた。
彼がもし人間なら、レストランで注文を決めるその決断力の潔さに彼女も惚れ惚れすることだろうに。

葉を落とした裸の枝に、幾つか残された柿の実。
空気の澄んだ青空に映えて、赤いその実は冬のシーンを彩っていた。
だがその柿の実たちは、不思議なほど歪な形をしている。
どれもこれも、果実の球形をとどめていないものばかりだった。

既に誰かによって食べつくされた実であることは王様にも分かった。
しかし今は、そんな贅沢は言っていられない。
彼は、その残った果肉を一口ついばんでみた。
「甘い実だ。これは美味しい」
「ここで腹いっぱい食べていこう」

二口目を食べようとしたその時だった。
人間の声がした。
「お前が、犯人だったのか。やっと見つけたぞ」
「朝から見張っていたとは思わなかったろう」
オジサンが言っている言葉は理解できなかったが、その怒りはヒシヒシと伝わってきた。
次の行動が予想できるような予感さえした。
予感的中だ。
またもやオジサンは棒で叩きつけようとしてくる。

王様は、もう一度『おはよう』作戦を実行してみた。
「おはよう」
唯一の観客に向かって心をこめて一声鳴いた。

オジサンの手が止まった。
持っていた棒を投げ捨て、なにやら緑の大きな物を持って来た。
「あ、言葉が通じたのかな」
「美味しいものをくれるのかな」
王様の期待を裏切って、オジサンはその緑色の網を彼に向かって投げかけた。
カラスの王様は驚いて飛び逃げた。

逃げながら、心に硬く硬く誓っていた。
「もう決して人間に向かって『おはよう』とは鳴かないんだ」

そして、いつの間にか人間が嫌いになっていた。
僕を見るだけで叩こうとする人間。
僕を捕まえようとする人間。
「人間って、怖い動物なんだな」

烏を鳥逃がしたオジサンは1人呟いていた。
「惜しかったぁ、逃げられたよ」
「九官鳥みたいだったな」
「話が出来る烏か。捕まえたかったなぁ」

でも、オジサン。
流石に柿の木に網を投げたって烏が捕まるわけはない。
漁の投網じゃないんだから。

              【つづく】・・・一声鳴いては旅から旅へ?
                チナミニ、「烏を鳥逃がす」は親父ギャグです。
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by keshi-gomu | 2011-12-22 20:12 | 【童話】カラスの王様