12月20日  【童話】カラスの王様 11

爪に紐が絡みつき、あいつは今、僕との勝負を忘れたかのようだった。
紐との格闘を始めたノラ猫を横目に。
カラスの王様が、ホッとしたのもつかの間だった。

「わぁ、痛てて・・」
「そうか、あいつが紐を振り解こうと手を振ると、僕の足も引っ張られるんだ」

紐が引かれるたびに、彼は叩き付けらるようにバタバタとその辺を転がった。
何度も何度も転がされて、たまらん。
「もう、たまらん」
と思った、その時だった。
紐が、ぱらりと解けたのだ。

それはなんと偶然にも、王様の右足の結び目だった。

「あっ」
彼は、自分の足をまじまじと見た。
「自由だ」
「僕の足に何もついていない」

何もついていない足を見つめて、考えていた。
考えてみれば今までだって、紐の結び目をほどこうと思えば解けたわけだ。
だが王様は、一度も紐を解こうとは思わなかった。
むしろ結ばれていることが、ここにいる証のような気さえしていた。

突然。
後ろからあいつが飛びかかってきた。
弛んだ紐があいつの爪の絡まりをも解いたらしい。
ノラ猫と烏は、まるで1個のボールのように絡み合いながら、戦いながら表へ転げ出て行った。

暫くの死闘の末。
どちらからともなく組み合った絡まりを解くと、2人は疲れ果てていた。
そしてお互いが勝者の顔をして背を向けて歩き始めた。

気が付くと王様は、いつのまにか田中家からずいぶん離れた所に来てしまっていた。
こんな形であの家を後にするとは思ってもいなかった。
かと言って、彼には、今さら戻って行く大義名分が見つからなかった。
もうすぐ学校から帰ってくる翔に、
「紐が解けちゃったよ。結んでよ」と軽く言いたい気持ちもある。
だが、久々に得た自由に、体が、羽が、ウズウズする嬉しさもあった。

僕は烏だ。
僕は鳥だ。
この羽が、大空を望んでいるんだ。

翔、ごめんね。
パパ、ママ、ありがとう。
さようなら・・・翔。

カラスの王様は、自分に言い聞かせるように、田中家に別れを告げて歩きだした。

                                 【つづく】・・・・・。
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by keshi-gomu | 2011-12-20 20:23 | 【童話】カラスの王様