12月19日  【童話】カラスの王様 10

「あ、またあいつがやって来た」

人間が誰もいなくなる昼下がりのこの時間、決まってやって来る『あいつ』である。
カラスの王様が人気アイドルだった時代から、どうも気に入らなかったようで。
最近は至近距離までやって来ては、すぐさまにも戦闘状態に入れる殺気を放ってくる。

「にゃぁ~」
しっぽをコブラのごとく振り上げて遠巻きにゆっくりと行ったり来たり。
白と茶の縞模様が薄汚れているし、見るからに『ノラ』だとわかる目つきをもしていた。

幕内力士の取り組みですら対戦相手はそうかけ離れていないものだが。
今日の顔合わせは、まるで異種格闘技のような2人であった。

烏とノラ猫。

まだ世間に疎い王様にはわからなかったが、あいつは知っていた。
烏は自分たち野良猫と、テリトリーも餌の内容も、すっかり重なり合っているのだと言うことを。
自分たちと人間の食べ残しを奪い合ってこそが、烏と言うものだと。
なのにここにいる烏は、人間にチヤホヤされて餌までもらってノウノウとしている。
あいつは、そんなカラスの王様が大嫌いだった。

もしこのノラ猫の気持ちが王様に聞こえたら、きっと彼はこう言い返すだろう。
「君に、生きたねずみが捕れるかい?」
(本当は捕れなきゃおかしいんだけどね、猫だから)
都会の烏とノラ猫の生きざまを知らない王様は、自信を持って言うだろう。
「僕は人間の食べ残しで暮らすなんてまっぴらだ」


突然、あいつが飛びかかってきた。
「上等じゃないか。受けて立ってやろう」
カラスの王様は、仁王立ちをして構えた。

だがあまりにも分が悪い。
あいつはフリーだが、僕は右足を紐で結ばれている。
半径2メートルの球を描くことしかできないじゃないか。
得意の『脳天必殺突き』をくらわすにも、十分な飛行距離がとれないぞ。

結局辺りをバタバタと逃げ回るしかなかった。
情けない。
そう思うと、敵はますます図に乗ってきた。

王様目がけて、得意の右手引っ掻き技を繰り出してきた。
内心、あいつの空を切る爪の鋭さに恐れをなしてしまった。
「おっと、顔はやめてくれ。アイドルは顔が命なんだ」
そう言って、飛退いた瞬間。
あいつの左手攻撃が、足の紐に引っ掛かった。

「わぁ~」
飛び上がった途端に紐に引っ張られ土間に強く叩き付けられる。
「こいつぁ、次に飛びかかってくるんだろうな」
恐る恐る振り向くと、案に反した場面があった。

紐が爪に絡みつき、『あいつ』は『カラスの王様』との勝負の前に、紐と戦いざるを得なくなっていたのだった。

                             【つづく】・・・・かなきゃ、ここは。
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by keshi-gomu | 2011-12-19 20:14 | 【童話】カラスの王様