12月14日  【童話】カラスの王様 5

『カラスなぜ鳴くの~♪』
     ・・・・・・・・・・・・の歌があるが、
『カラスの勝手でしょ♪』
     ・・・・・・・・・・・・とつなげるほどの烏になっていない彼は、
『かわいい七つの子があるからよ~♪』
     ・・・・・・・・・・・・の童謡が似合う烏だった。

お腹が空いていた。

そういえば、故郷の山里を出て以来すっかり餌探しをすることを忘れていた。
「この街には僕の食べられる餌はあるんだろうか?」
見る限り、美味しそうな実のなっている木々がない。
山がないのに虫やネズミが捕まるのだろうか。
カラスの王様は、新たな不安に襲われてきた。

「もう少し飛んでみよう」
餌を探して、自分の安住の地を求めて、王様は更に先に進むことにした。

背の高い建物ばかりの街並みを後にして、暫く飛ぶとなにやら故郷を思い出させる緑の塊が見えてきた。
「林だ!」
人間が住む家々の先に、小さなスケールではあるがこんもりと緑の林が見てとれる。
「虫がいるぞ!木の実があるぞ!そうだ、今夜はあそこに止まろう」
忘れていた安堵感を久々に感じながら、彼はその林をまっすぐに目指した。

いつの間にか夕方の金色の日差しが、彼の後ろから舞台効果のように照らしつけていた。
目指す緑の林は、それこそ楽天地のように輝いて、カラスの王様を手招きしている。
「もう少しだ。この人間の寝床の群を越していけばあの林にたどり着く」

ただただ一心不乱に飛び続けた。
すると、急に彼の前に四角い建物が見えてきた。
前の街で見かけた背の高い建物たちよりは低いが、しかし人間の寝床の群よりは一段と秀でている。
「あの四角い物の上を飛び越えなくてはいけないのか?」
王様は考えた。
「飛行高度を上げて飛び越えるには、今の体力では少々無理がある。かと言って、迂回して飛ぶにのは時間のロスだよな。まっすぐに少しでも早くたどり着きたいもの。あの林に。日が暮れる前までに」
そう考えている間にも、建物が近づいて来る。

「ん?なんだぁ。この四角い物は、真中があいているんじゃないかぁ」
目の前にやってきた建物は、四角いドーナッツのように真中があいていた。
「問題ないじゃないか、この間をくぐり抜ければいいんだ」
王様は飛行速度も高度も変えず、まっすぐ建物をくぐり抜けて行った。
・・・行くはずだった。

だが突然、そこから彼の記憶がなくなった。

四角いドーナッツに見えた建物は、一面のガラス張り様式だった。
夕焼けの日差しがいたずらし、彼の目にはそこには何もないように映ったのだった。

『ガラス』に汚れがついてなければ・・・『カラス』だもの・・・
なんて冗談を言っていられる場合じゃない。
カラスの王様は見えない何か大きなものにぶつかって、まっさかさま地上に落ちて行ったのだった。

                          【つづく】・・・よね?

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by keshi-gomu | 2011-12-14 20:15 | 【童話】カラスの王様