12月13日  【童話】カラスの王様 4

ガタン。
地面が大きく揺れるのを感じて、カラスの王様は飛び起きた。
「地震か?」
見渡すと、すっかり夜は明けていた。

「そうだ、昨日は黒い箱の上で眠ったんだったけ」
地面じゃない、その黒い箱が今揺れているのである。

ガタン。ガタン。
大きな黒いいくつもの箱が、ゆっくりと動き出した。
彼が一晩過ごした所は、貨車の屋根の上だったようだ。
動き出した箱に分けもわからずしがみ付いたが、スピードが増した途端に振り落とされそうになった王様。
かろうじて貨車と貨車の隙間の溝に落ち着いた。

周りを見ていると、自分が飛び回る時よりも景色が早く流れていく。
「なんなんだ?この動物は?こんなに早く飛ぶ・・いや、空を飛べないのだから鳥ではないな」
初めての体験を冷静に分析する余裕が出来ていた。
「なんだか飛んでいるのは、世界の方みたいだ」
畑が飛び、木々が飛び、遠くの山々がゆっくりと後ろに飛んでゆく。
それを見ているといつしか気分が悪くなってきた。
気が遠くなっていった・・・

「オイ、こんな所に烏が引っ掛かっているぞ」
その声でカラスの王様は我に返った。
黒い四角い動物はすでに止まっていた。
そして、2人の人間が自分を珍しそうに覗きこんでいたのだった。
「生きているのか?面白いな、捕まえてやろう」
2人は、彼を生け捕りにしようと襲いかかってきた。
「え?どうして?人間はどうして僕を見ると捕まえようとするんだろ?」
彼は4本の腕をするりと抜け、貨車の下に落ちるように飛びくぐり、またもやかろうじて逃げ遂せたのであった。

自分の羽で飛び回る空はやはり格別だ。
ただ、眼下に見える新しい世界は、山里の懐かしい景色ではなかった。
一面の畑でもなかった。
家、家、家。
ともすると、飛びながらも見上げる高い建物すらそこには存在していた。

カラスの王様は、都会の空を飛んでいる興奮を抑えきれなかった。
「ここが噂で聞いた人間の街なんだね」

                                【つづく】・・・・かも。

d0012611_071715.jpg

[PR]

by keshi-gomu | 2011-12-13 20:30 | 【童話】カラスの王様